明治大学付属世田谷中学校・高等学校
理想を押し付けず、生徒自身のペースで
創発科は体験に根差した人格教育を行う場
Q.創発科では生徒にどんな力を育てたいと思っているのか、お伺いできますでしょうか
創発科では、体験に根差した人格教育として、様々な体験を基盤にしながら人間的な成長を促していくことを目指しています。
探究よりもさらに根幹のものとして、自分が成長していく中でアンテナを張り、
生徒たちがどんな人になっていきたいかをイメージできるようになってほしいという思いで、創発科のプログラムを提供しています。
中学生の時期は、まずは多くの体験を積むことを大切にしており、その体験を通じて自分なりの考え方を育んでいく段階だと捉えています。
そして高校生からは探究に寄せたプログラムへと移行し、自分自身を深く知ることを大切にしています。
Q.その中でどのような期待を込めて、以前一度フォーサイトを導入くださったのですか。
創発科の中で、「自分自身を知る」ということは大切なプログラムになっています。
その中の自分の管理や自分を振り返ってみるという項目の中で、
以前から手帳を使って自己管理をしていくことを構想していたため、
男子校時代に一度フォーサイトさんを使うということで導入をしました。
詰め込み過ぎと理想の押し付けが敗因の元
Q.導入後フォーサイトを一度断念してしまった背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。
すでに導入をしていた学習ノートは担任が毎日チェックをし、返事を書くということをしていました。
ですからそこにフォーサイトを導入したことで二重に記録していく状況になり、
我々としても負担が大きくやり切れないなということで一度断念をしています。
また私自身の理想が高かったです。(笑)
まずは「こう書け」と指導をしていきましたが、そうすると求めることが多いので、
他の毎日やらなければならないこともある中で総量感でいうと、多すぎました。
今振り返ると、大人の自分でも続けるのが難しいような理想を、生徒に押し付けてしまっていたのだと思います。
私自身の理想とする使い方を、そのまま生徒たちに求めてしまったことが、たぶん間違いなく敗因です。
Q.なぜそこからもう一度フォーサイトを導入することに至ったのでしょうか
自分を知る・計画的に学習を進めるという根幹はずっと変わらず置いておりました。
学習ノートの活用を続けていたのですが英語と漢字の学習を中心としたものだったため、
より自由度のある学習習慣をイメージした時に、学校の名称変更も相まって(フォーサイトの方が)最適だと考え、導入をしました。
変えたのは先生方の中でのすり合わせと最初の導入時の声掛け
Q.以前の導入と今回の導入で変えた点があれば教えていただきたいです。
先生方とのすり合わせを行いました。
一番最初に「ここ最低ラインでやっていきましょうね」「こういう声掛けをしましょうね」という認識をまずすり合わせました。
そして生徒たちには、スライドを作成し、「ファーストステップとしてこれだけ書こうね」「これ書くよ」「いつ書くかな」
という書く内容とタイミングも提示しました。
ただ『手帳を書きましょう』と伝えるだけではなく、
どんな目的があって、何のために取り組むのかをしっかり示すことが大切だと思っています。
生徒自身が『たしかにそれなら大切だな』と納得して取り組めるようにすることが、一番重要なんです。
これは生徒に実施したガイダンスでも意識しました。
さまざまな文献を調べながら、『どのような内容であれば生徒が納得してスタートできるのか』という視点で内容を考え、構成していきました。
実際の運用について
手帳を書き始めるにあたっては、「何を書けばよいのか」が分からない生徒も少なくありません。
そのため、「まずはここまでは書きましょう」という最低ラインとして、次の4つを示しました。
① 時間割と授業評価
② 目標学習時間と予定、小テストなど
③ 起床時間と就寝時間
④ 一日の振り返り
最低ラインをどこに設定するかは、学年ごとの生徒の特性に合わせて決めています。
この学年は、手帳を書くことにそれほど苦手意識がないと感じていたので、あえて最低ラインを少し高めに設定しました。
そうすることで、生徒たちは『これくらい書くのが当たり前なんだ』という感覚で取り組むようになります。
気づいたときには、自分たちが当たり前に続けていたことが、実は一般的な基準より少し高いレベルだったと実感できるんです。
その成功体験が、『自分にもできる』『続けられた』という自信や、次へのモチベーションにつながる生徒も多いと感じています。
一方で、手帳を書くことに苦手意識が強い学年では、最初から多くを求めることはしません。
本当に最低限の項目だけを示し、まずは『続けられた』という成功体験を積み重ねてもらうことを大切にしています。
手帳の活用方法については、「何を書くか」だけでなく、「いつ書くのか」「いつ見返すのか」まで具体的に示しています。

■ 帰りのホームルーム前に記入すること
帰りのホームルームが始まる前には、次の3つを記入するようにしています。
① 目標復習時間
② 連絡事項
③ 今日の振り返り
目標復習時間を毎日記録しておくことで、
テストが終わった後に『今回はこれくらいの時間をかけて、この点数だった』
『次は何時間くらい勉強すれば目標に届きそうか』と振り返ることができます。
勉強時間を記録すること自体が目的ではなく、
その記録を次のテストに向けた学習計画に生かすことが大切だと考えています。

■ 授業中に記入すること
授業中は、教科担当が『フォーサイト手帳を開け』と声をかけることを合図に、手帳を活用しています。
記入する内容は、主に次の2つです。
① 授業の理解度チェック(授業終了時)
授業の理解度は、○・×ではなく、あえてA・B・Cの3段階で評価するようにしています。
・A:よくわかった
・B:わかった
・C:わからないところがあった

② 小テストの予定
中学3年生になり受験を意識する時期には、自分のできていない部分を厳しく分析することも必要になると思います。
しかし、まだ今の段階では、それよりも『自分はできている』『頑張れている』という感覚を持ち、自己肯定感を高めることを大切にしたいと考えました。
そのため、理解度を段階的に振り返る方法を取り入れています。
■ 自宅で記入すること
自宅では、生活リズムと学習習慣を記録しています。
① 起床時間(W:Wake up)
② 勉強時間(S:Study)
③ 就寝時間(Z:zzz)
生活習慣と学習時間をあわせて記録することで、自分自身の生活を客観的に振り返り、改善につなげられるようにしています。

■ まずは1か月続けることを目標に
手帳を習慣にするためには、まず継続することが大切です。
一般的に、習慣化には約3か月かかると言われています。
ガイダンスでは、習慣化の目安として次のように伝えました。
・行動に関する習慣化 … 約1か月
・生活リズムに関する習慣化 … 約3か月
まずは最初の1か月を頑張ろう、と生徒には話しています。

■ 『なりたい自分』を目指して手帳を活用する
手帳は、ただ記録するためのものではなく、『なりたい自分』に近づくためのツールです。
そのため、最初から完璧を目指すのではなく、自分に合った形で少しずつ活用の幅を広げていくよう伝えています。
・最小値:今回確認した基本の記入項目
・最大値:自分をアップデートするために必要だと思うことすべて
最初からあれもこれも頑張ろうとすると、続けることが苦しくなってしまいます。
まずは基本的な項目から始めて、慣れてきたら自分なりの工夫を加えながら活用の幅を広げていけばいいと考えています。
紙で書くことで思考力を鍛える
Q.デジタル版もある中で、なぜ手帳を選ばれたのでしょうか。
AIやICTが勢いを増す中でも、今までの学校のスタイルとして「書かせる」ということにこだわりがあります。
「書くことが苦手=書かせなくていい」ではなく、段階的に書かせることが大切です。
苦手な場合はいきなりみんなと同じように書くことを目指すのではなく、
今の自分より一歩書けるように、というスタンスで向き合うことが大切だと考えています。
また書くことで思考力がつくと考えています。
具体的には、「これはいる」「これはいらない」という取捨選択する力や考える力です。
大人になってからも仕事上で必要なことをメモしたり、
自分の思考を整理するのにメモに書いたりすることは結構大事だと私自身感じています。
フォーサイトが当たり前に
Q.運用を変えてみて、実際に感じた生徒の変化はありますか?
忘れ物をしてしまったときに「どうすればいい?」と言ったら、悩まず「手帳に書きます」ということが出てきたり、
授業がない夏休みの一日に自習室で友達と予定を合わせる時にも、フォーサイト手帳を開いている姿を見かけたりしているので、
それだけでもまず持たせて良かったなと思います。
「じゃあいつ集まろうか」となると、「ちょっと待ってください」と言って、シュッと手帳を取り出す生徒もいます。
いつでも手帳を持ち歩き、「手帳を見れば予定が分かる」という感覚が、生徒の中で自然と身についてきているのだと感じています。
Q先生方の変化もありますか?
生徒の状況をより把握することができるようになりました。
手帳と向き合っているときは基本的に1対1じゃないですか。なので割と自分の素直な状況を書いてくれています。
例えば「推しのキャラクターこれなんです」ということが書いてあって、クラス全体で見ているとなかなか知る機会がありませんが、
そういうことを書いてきたら「あ、この子はこういう感じなんだな」と、新たな一面を知ることができたりしています。
今後に向けて
今後は使い方の提案の幅を増やしていきたいと考えています。
「学校内でこういう使い方をしている人いるよ」ということを紹介したり、
「起きる時間を「W(wake up)」、寝る時間を「Z(zzz)」と表記したり、
さまざまな工夫を集める「略語コンテスト」を実施したりするなど、「こんなふうに使っています」という
アイデアを共有できる機会を作れたらいいなと考えています。
